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執筆者の写真tito

サケの養殖:FRDジャパンへのインタビュー

本記事は、持続可能な食料システムをデザインする方法を探る一連のブログ記事とビデオの一部である。人間が消費するための食の生産は環境に悪影響を及ぼし、人間の活動と生態系の完全性との間にトレードオフの関係が生まれます。本シリーズを通じて、私たちは、農家、漁師、林業者、貿易業者、小売業者、消費者など、食料サプライチェーンに関わる人々の声に耳を傾け、食料システムの根底にある課題、矛盾、トレードオフを理解します。これはまた、大学のカリキュラムや日々の授業に持続可能性を取り入れることにも貢献するとともに、つながっています。 研究を通して豊富な知識を蓄積し、教育を通して学生と交流することで、私たちは関係者と協力し、社会生態的正義と持続可能性の原則に基づいたオルタナティブなフードシステムの必要性を訴える声を増幅させることが重要と考えます。


今回の記事は、FRDジャパン(埼玉県・さいたま市)とのインタビューです。同社は、2013年に企業し、閉鎖循環式陸上養殖で獲れたて・新鮮・安心安全な魚を、世界中のあらゆる場所で生産できる未来を創っていくことを、ミッションに据えています。


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Q. 1 世界的に見て、私たちを取り巻く環境では、サステナブルな取り組みが必須になっています。そこで、お伺いしたいのですが、サーモンを陸上で養殖することが、どうしてサステナブルな取り組みにつながるのでしょうか。


一般的にサーモン類は寒い地域の海面で養殖されています。さらに、フィヨルド地形といった入り組んだ海岸線の場所でしか育てられないため、チリとノルウェーのほぼ二か国で全世界の需要を満たしてきました。このため、高密度での飼育が必要になり、海の自浄作用を超える量の魚が生産されている地域も増えてきています。その結果、海底にフンや餌の残りが溜まり、特にチリでは抗生物質入りの餌が使われることで、海底のバクテリアが殺され、海が汚染される問題が発生することがあります。


このような背景を受けチリやノルウェーでは新たな養殖ライセンスが発行されない方針のため、チリやノルウェーでの生産量が増え続けること考えにくいかと思います。こうした状況の中で、今後増えていく世界的なサーモン類の需要に対応できるのが、海に依存しない陸上養殖です。陸上養殖なら海水を使わずに養殖できるので、海洋汚染のリスクを大幅に低減できます。これからも需要が伸び続ける中で、環境に負荷をかけない方法で生産を続けられるという点で、陸上養殖はサステナブルな選択だと思います。


Q. 2 従来のサーモンの海洋養殖に比べ、陸上養殖はどのような利点があるのでしょうか?


まず、循環式陸上養殖技術で魚を養殖して商業化に成功した事例は、世界的にまだ見られていません。循環式陸上養殖には、半循環式と閉鎖循環式がありますが、これらの大きな違いは水の入れ替える量にあります。従来の半循環式では、一日に水槽の約30%を海や川の水と入れ替える方法が一般的でした。しかし、閉鎖循環式ではその水の入れ替え量が約1%前後に抑えられるのが最も大きな違いです。この違いによって生まれるメリットについてですが、例えば日本でサーモンを養殖する場合、30%の水を入れ替えると夏場には非常に暑い水を取り入れることになります。それをサーモンの適温である15度程度まで冷却する必要があり、その冷却コストがネックとなっていました。そのため、電気代が高すぎて日本では夏場での養殖が基本的に難しいという現状がありました。しかし、閉鎖循環式では水の入れ替えが約1%前後に抑えられるため、一年中一定の水温を保つことが可能となります。これにより、年間を通じたサーモンの生産が可能になる点が最大の強みです。


既存の半循環式と比べて、閉鎖循環式の利点についてですが、水道水や井戸水を使うため、海水由来の病原菌侵入リスクを回避できます。その結果、病気のリスクも少なくなり、抗生物質を使わずに養殖が可能です。海水を使用する場合は、抗生物質の使用が一般的ですが、閉鎖循環式ではその必要がありません。

別の利点として、大規模な斃死リスクが非常に限定的です。半循環式では自然災害や上流からの汚染の影響を受けやすい分、大量斃死のリスクもそれなりにありますが、閉鎖循環システムではそのリスクがほとんどないという点においては優位性があると考えられます。


現在、閉鎖循環式は世界的に見ても取り組んでいる企業数はかなり限られています。その中でFRDの強みとしては自社の技術を使用しており、設計から施工、養殖まで自社で行っています。


2018年、木更津に実証実験プラントを建設し約6年間研究開発を行ってきました。その間、目標の成長に達するために水質や餌、種苗などの検証を行いましたが、やっと安定して目標の成長を達成し、商業プラントへの移行が決定しました。この知見を活かし、富津での商業化を目指しています。


Q. 3 陸上養殖を事業化するにあたり、チャレンジのようなものは、ありましたでしょうか。


日本のにはたくさんの小規模陸上養殖場が存在します。しかし小規模では商業化は困難で、コストを抑えるためには大規模化する必要があります。商業規模のサーモン養殖には、年間生産量数千トンが必要だと考えており、当社では将来年間3,500トンの生産を予定しています。このような大規模養殖場を建設するため200億円超の資金調達を行ったことは大きなチャレンジだったと思います。


また陸上養殖工場の建設に際して、地域住民の声にも耳を傾けることもとても重要です。富津市では、市長を含む市の代表者からは、積極的な支援の意向が表明されています。この工場が完成すれば、サーモンの出荷量が増加し、地域経済や雇用に寄与することが期待されています。一方で、近隣の住民からは大規模建設に対する不安の声も挙がりましたが建設に先立ち、住民説明会が開催され、近隣住民の理解が得られた上で工事が着手されました。




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