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執筆者の写真KASA Sustainability

2023年秋「七色の人生」:亀岡フィールドワーク

七色の人生: アート・デジタル・フィールドワーク実践型環境セミナー」は伊藤毅教授とジョン ・ウィリアムズ教授の二人による上智大学の教育イノベーションプログラムで出来た国際教養学部の新しいコースである。そして第一回目が2023年度の秋学期に始まり、新潟県佐渡島そして京都府亀岡市の二つのフィールドワークがあった。




このコースの中心的なテーマのひとつがアグロエコロジーの概念から食と農業の探究であった。アグロエコロジーは、食料システムの生態学的、経済的、社会的側面にわたる持続可能性を促進するために、研究、教育、行動など含めた多面的な考え方である。気候変動をはじめとする社会生態学的な課題に直面する中、アグロエコロジーは、社会的正義や持続可能な環境な方法で人間の生存ニーズを満たすための別の方法を提示している。


アグロエコロジーの様々な要素を実際に見ることができる場所のひとつが、京都府亀岡市である。緑豊かな山々に囲まれた盆地に位置する亀岡市は、古くから京都の農産物を生産地として重要な役割を果たしている。野菜や米などの農作物が豊富に生産されることから、「京の台所」と呼ばれている。近年、亀岡市は日本を代表する環境先進都市を目指すために様々な取り組みを推進し、持続可能なフードシステムを構築するための行動を積極的に起こしている。


2018年に亀岡市は「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表し、2021年には日本で初めてプラスチック製レジ袋の提供禁止を実施する都市となった。さらに、亀岡市の自治体は有機農業を積極的に推進しており、2023年には「みどりの⾷料システム戦略」の一つ「オーガニックヴィレッジ」を宣言した。地域活動から市のリーダーシップに至るまで、亀岡市の住民はあらゆるレベルで、自分たちの市を再考し、持続可能な都市づくりを進めている。様々なステークホルダーの取り組みやお話しを聞くために私たちのクラスは2023年12月15日から18日まで亀岡を訪れた。



亀岡オーガニックアクション

亀岡オーガニックアクションは、持続可能な農業を推進するため、農家、学術研究者、地域住民で構成されている団体である。亀岡オーガニックアクションの様々な活動の内一つが有機学校給食プログラムで、保津小学校に有機米を提供している。私たちはこの学校を訪れ、1年生から6年生までの60人の児童を対象としたワークショップを行った。6つのグループに分かれ、給食に使われている有機米が届くまでの道のりを栽培から給食までのさまざまな要素について考えながら、それを描いた。児童たちは、水や日光、土や微生物、虫や動物、農家さん、給食スタッフ、有機米を使った給食などの要素を、色とりどりのイラストが描かれた。下記のコラージュは、各グループが描いた絵の一部である。



地域団体とアーティスト

保津川のプラスチックゴミ問題に取り組み、環境保全を推進するため、2007年に「プロジェクト保津川」が設立された。このNPO法人は、毎月の河川清掃、エコツアーの開催、子どもから大人まで参加できる教育ワークショップの開催、リサイクルやプラスチック削減に関する意識を高める活動など、幅広い活動を行っている。私たちはある朝、川の清掃活動に参加し、地元の住民と一緒に川岸のゴミを拾った。小さな子どもから年配の方まで、多くの人たちが一緒になって環境保護に取り組んでいる姿は感動的だった。






私たちは地域活性化や環境保護活動に従事するアーティスト及び活動家にも出会った。米谷 健+ジュリアは、クリエイティブなアート活動と有機農業を両立させている二人であった。自給自足生活を再生可能な農業で実証実験しているライスバレーという農場を訪れた。それから、最近、隣村に建てられたオフグリッドのアート施設、「ドリームズアートハウス」を案内してくれた。環境、社会、政治的な問題に取り組むさまざまなテーマに触れた彼らの作品が展示されている。米谷夫妻はこの拠点をアート、コミュニティ形成、文化交流、そして持続可能な実践が出来る場所にしたいと考えている。


KIRI CAFEは、かめおか霧の芸術祭のプロジェクトの一つとして、地元のアーティストによるコミュニティの形成そして人々の日常生活の中で芸術的探求を促進するための取り組みが行われている。KIRI²芸術大学を通じて、様々なイベント、ワークショップ、体験学習などを開いている。KIRI²芸術大学は多面的な教育アプローチを取り入れ、心・頭・手を育むことを目的としている。そして、KIRI²芸術大学は、幅広い絵描きから木工職人まで、地元のアーティストたちによる多彩なコースが用意されており、昔の知恵袋から学び、人生を豊かにする技術や技能を養う機会を提供している


亀岡への4日間のフィールドワークは、食、農業、持続可能性について考えるとても大切な機会になった。亀岡オーガニックアクションやプロジェクト保津川といった地元の組織との交流は、持続可能な実践や環境保全に向けた献身的な取り組みを示すものであった。また、米谷健+ジュリア夫妻やかめおか霧の芸術祭プロジェクトのメンバーのようなアーティストとの出会いは、コミュニティの活性化を促進し、差し迫った社会環境問題に対する意識を高める上で、創造性や芸術が果たす役割の可能性を示したものであった。亀岡への訪問は、アグロエコロジーと持続可能な農業への理解を深めただけでなく、持続可能な社会を実現するための草の根の取り組みと地域社会の関わりの重要性を教えてくれた。

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